工作機械を使って切削加工をする際に発生する切粉の処理は、コスト的にも環境的にも課題が多い。開発者現行品の金属切削屑破砕圧縮装置は、工作機械から大量に発生する切粉を発生直後に破砕し、直径の小さな圧縮成形室に移送して圧縮固形化して減容し、同時に滲出した切削油も回収ができる小型の装置であり、各工作機械の切り粉排出口にあるチップバスケット(切削屑箱)に置き換えて配置することが可能で市場に受け入れられている。本技術開発では、現状油圧を用いている装置を全面的に電動化することで低価格化を目指すとともに、メンテナンス性の向上やCO2削減等環境適合性の向上も目指すものである。
油圧装置を電動化するためには、油圧シリンダーの代わりに電動モータの回転を直線運動に変換する機構が必要となる。ここでは、軸中心から軸端にかけて右ねじ/左ねじを切った螺旋溝軸で駆動する8リンク式の倍力装置を開発することで、油圧シリンダーと同等な出力を実現する。このリンク機構は高速移動と倍力効果を同時に得ることが可能で、圧縮終盤の大きな圧縮力が必要な時は入力より最大で10倍の圧縮力が得られる。
本開発により、油圧式装置のコンパクトさを維持しつつ、油圧式に比べて低コスト化が実現できる。また、油圧システムでは油圧ポンプを常時駆動しているのに対し、電動式では必要な時だけモータを駆動することになるため、約40%の電力使用量削減が見込まれる。
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