人口の少ない中山間地域では、高齢化率が高い一方で交通インフラが未整備であり、デイケアサービスや介護タクシーの車両が進入できない道が多く存在する。その結果、高齢者の移動手段が限られ、社会的フレイル(加齢による心身機能低下)の進行や、医療・福祉関係者・介助者の負担増といった課題が深刻化している。このような状況を受けて、中山間地域における安全で円滑な移動を可能にする「小型モビリティ」の実現が求められている。
本技術開発は、既存の折り畳み手動車椅子に簡単に装着することで電動車椅子として利用可能にする後付けの電動補助アタッチメント(図1)を開発するものである。多様な車椅子に対応した設計と容易な着脱性(図2)を有し、中山間地域特有の傾斜や凸凹道といった過酷な環境への適応を重視している。さらに、走破性と安全性を備えるだけでなく、遠隔からの見守り機能も組み込むことで、利用者と介助者双方の負担軽減を目指す。介助者による操作モードと自操モードの双方に対応し、少人数での介助や自立移動を支援する。
この技術により、高齢者や身体に不自由を抱える人々が中山間地域でも安全に外出できる環境が整い、社会的フレイルの改善や医療・福祉関係者・介助者の負担軽減が期待できる。また、急傾斜や狭い道路など従来の福祉車両では対応できなかったエリアにも進出可能となるため、介助者不足問題への解決策としても有効である。こうした技術がもたらす社会的価値は、中山間地域における生活の質の向上と地域の活性化に大きく貢献することが期待できる。
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