マグネシウム合金製スクリューは、骨折部位を固定しながら時間とともに生体内に吸収され、埋入された空隙は骨に置換され再度取り出す必要がない。特に可変ピッチとテーパを持つ特殊形状スクリュー(図1)は、手足の細かい骨折片を確実に固定し骨癒合を促す次世代インプラントとして期待されている。本新技術開発は、当該スクリューの実用・普及のために必須となる専用手術器具の開発に関わる。
当該マグネシウム合金製の骨固定スクリューの使用には、 手術時に骨切片の位置合わせと固定を行うガイドワイヤが貫通する中空ストレートドリル、テーパドリルの開発が必要である(図2①②)。スクリューもガイドワイヤが貫通する中空且つ小径であることから、埋入時に過剰な負荷を避け、確実な骨固定力が得られる適切な下穴径とテーパ角を見出すことが重要となる。スクリューには、トルク伝達効率の良いヘキサロビュラ型のヘッド部を採用し、同様に中空構造を持つその専用ドライバ(図2③)の技術開発を行う。 これらの器具の試作を通して、性能評価(ドリル下穴径、ドライバートルク測定)と耐久性、総合性能評価(強度、ドリル精度、切削性、耐食性)を行い、必要な諸元の確立を目指す。
マグネシウム合金製のスクリューやインプラントは生体吸収性のみならず骨誘導能も期待され、骨固定用スクリューのみならず他用途の埋め込み型インプラントなどもあることから、その市場性は大いに期待される。生体吸収性により再手術が不要で、患者や医療への負担軽減、経済性も認められる。さらに、マグネシウムは融点が低く再利用し易いことから、当該スクリューや手術器具加工後の端材の医療部品や他用途への再利用も可能である。以上から、波及効果とともに公益性も認められる。
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