近年、難分解性有機化合物をクリーンに分解する必要性が求められており、具体的には、自動車、医療、食料、美容分野などから発生する難分解性有機化合物を含む廃液や、半導体分野などから発生する難分解性有機フッ素化合物(PFOA,PFOS,PFHxS)廃液の分解問題が大きく取り上げられている。 本開発は、分解が不可能または分解に多大な環境負荷がかかっている難分解性有機化合物処理を、高電圧高速パルス制御技術を用い、液中で高密度プラズマ生成を可能とすることで低環境負荷及び低コストで分解処理を可能にする「液中高密度プラズマ・リアクタシステム」の開発であり、高電圧を高周波数で発生させるために、二次側巻き線間をスパイダー巻き構造として寄生容量を減少させ、繰り返し周波数400kHzを実現し、プラズマを高密度化することで低電力化を可能にしている。こうして発生させたプラズマにより、積極的にヒドロキシルラジカル、過酸化水素(Fe電極とフェントン反応)、オゾン(オゾン水)を大量に発生させ、有機化合物の完全燃焼を行うことにより、難分解性物質の分解を実現している。 これまで非常に多く使用され自然環境中に「PFASサイクル」として分解されることなく循環し、我々の生活に入り込んでいる難分解性有機フッ素化合物(PFOA,PFOS,PFHxS)は、健康障害が懸念されており、水道水は1リットルあたり50ナノグラム(ng/L)という「水質基準」が2026年4月に水道法上に引き上げられる方針が了承されている。これらPFASサイクルを断ち切るのに欠かせない方法となってくるとともに、放射線汚染土壌からセシウムを分離回収できる可能性があり、社会的に大いに期待される技術である。
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