水溶液中の塩素濃度の測定法として、比色式測定法などが知られているが、正確さには課題があり、また連続計測への対応は原理的に困難である。一方、食品加工等に用いられる殺菌用洗浄水の塩素濃度の高精度連続測定とそれに基づく管理は、喫緊の課題となっている。本技術開発では、電気化学測定法にニューラルネットワークによる機械学習を実装することで、こうした課題に対応することを狙いとする。 塩素濃度を電気化学的手法により計測する際、pHや電極使用回数、温度の影響により、電位-電流曲線は異なる傾向を示す。例えば、曲線におけるピークの有無、曲線のシフトなどが発生し、環境条件が一定にできない状況下では正確に塩素濃度を測定することは困難となる。そこで、ニューラルネットワークによる機械学習を用いることで電位-電流曲線の特徴を把握、塩素濃度とpHを出力する(図1)。この電位-電流曲線は非線形な電気化学反応を示しており、これに適応した非線形補正機能を持つ機械学習アルゴリズムを構築し、測定セルに解析システムを実装した測定システムの開発を目指す。図2は当該機械学習アルゴリズムの構築にあたり、学習用データを収集する装置構成を示す。これにより、環境条件の影響を極小化、塩素濃度の高精度連続測定を可能とし、食品加工現場で適用可能な可搬型装置開発として実現する。 本技術開発により、サラダや生野菜、カット野菜などを加工する現場に塩素濃度の高精度連続測定装置が設置されれば、より安全性の高い食品の提供が可能となる。さらに本技術は、水資源インフラ整備にも展開することが可能である。人的負担を最小化し、正確に連続測定可能とすることで浄水場や上下水道施設のメンテナンスの省力化、塩素投入量の適正化、管理の省電力化にも貢献でき、環境負荷低減、地球温暖化防止にも寄与することが期待できる。
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