新技術開発助成

第86回新技術開発-07

強度と生体親和性を併せ持つ2成分系外科用接着剤の開発

技 術 開 発
契 約 者
泉工医科工業株式会社
代表取締役   青木 眞
所 在 地
東京都文京区
技 術
所 有 者
独立行政法人 物質・材料研究機構
技 術
開 発 者
泉工医科工業株式会社
常務取締役 生産開発本部副本部長  神谷 勝弘

技術開発内容

 外科手術が施された皮膚の接合、肺、肝臓などの創部の閉鎖止血や、解離性大動脈瘤の処置における血管外膜と内膜の接着などには外科用接着剤が用いられている。現在使用されているシアノアクリレート系接着剤や、接着成分としてバイオポリマー系を用い硬化成分としてアルデヒド系を用いる2成分接着剤は、接着強度は高いものの、生体親和性が低いなどの課題があった。一方、フィブリン系接着剤は、生体親和性は高いものの、接着強度が低い課題があった。
 本技術開発は、高接着強度と高生体親和性を両立した新しい外科用接着剤の確立を目指すものである。接着成分には、生体親和性に優れたゼラチンを疎水化することによって、生体組織に対する浸透性に寄与する疎水化ゼラチンを用いる。また硬化剤としては、生体内の代謝・排泄サイクルに合致し生体親和性が高い有機酸に反応性官能基を修飾することで、生体組織および疎水化ゼラチンと反応して高い接着強度を実現する有機酸架橋剤を用いる。具体的には、独自に見出されたこれらの新たな接着成分の製造プロセスの最適化とともに、2成分混合比の最適化を図り、生物学的安全性試験を含む評価試験を進め、新世代の2成分外科用接着剤の混合システムの開発を行う。
 本技術開発による新しい外科用接着剤は、外科手術に伴う縫合・抜糸を省き、創部閉鎖を安全かつ確実に 行うことができ、患者の身体的負担の軽減のみならず、医師の負担軽減にも大きく貢献する。特に、重篤な大動脈瘤の処置においては、新接着剤の高い生体親和性により組織壊死を起こさないことから、再手術を避けることができ、患者の著しい負担軽減につながる。また、循環器のみならず、運動器、感覚器、口腔内などへと適用範囲の拡大が可能となり、当該国産技術がもたらす医療への多大な貢献とともに、大きな経済的効果が期待される。


図