これまで、食品・医薬品等の密閉包装内部の残存酸素量の測定は、抜き取り検査によるもので、実際に消費者に届けられる製品内部の量は判らなかった。これに対し、本測定装置は、インライン全数非破壊検査を実現しようとするもので、食品等の大幅な信頼性・安全性向上とともにその検査コストの削減を目指すものである。
本装置の方式は、図1に示すように、残存酸素のレーザー光吸収によるスペクトル変化に基づく計測方法である。図2は、現状の開発評価機の外観である。従来からある材料分析技術を元に、製品の検査工程に用いるため、さまざまな新規なアイデアが盛り込まれている。たとえば、パッケージの姿勢や内部の散乱の差が計測に影響しないようにするため、パッケージの同一点に異なる波長のレーザー光を通過させている。
本技術開発では、実際の食品パッケージに用いるために必要な測定精度と安定性を確保するため、(1)吸収スペクトル線を追従するためのエレキ系、温度制御系システム、(2)波長掃引積分吸収測定方式、(3)レーザー光を多重にワークを通すためのマルチパスセルの開発を行う。
本開発装置の実現により、食品・医薬品の信頼性・安全性を飛躍的に向上させることができるとともに、従来の抜き取り検査から生じる無駄な廃棄物を削減でき、環境に配慮した生産ラインが構築できる。また、さらには、酸素以外の現場で取り扱われているガス(たとえば、HCl、HF、NH3など)の非破壊分析の可能性もあり、わが国の計測技術の向上に対する大きな貢献が期待される。


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