円環形状の磁性体(以下、コアと呼ぶ)の外周に、銅線を螺旋状に巻付けて作られるトロイダルコイルは、その多くがアジア新興国を中心とした海外で手巻き生産されている。一方で、ハイブリッドカーや電気自動車などのエコカー需要が今後さらに伸びていくとの期待から、品質のばらつきが少ない機械巻きで、且つ銅線径の太い大容量トロイダルコイルが、自動車メーカーから要望されている。こうしたニーズを背景に、本開発では、最大径φ4mmの太い銅線に対応した、大型トロイダル全自動巻線機の実用化を目指す。
本技術の新規性は、銅線の巻付け方法にあり、具体的には、ノズルクランプと呼ぶ機能部品を使って、銅線をコアの外形形状に合わせてあらかじめ成形し、成形した後にコアに巻付けていく点に特徴がある。従来技術では、コアに銅線を巻付けた後にプレス成形をおこなっていたが、銅線径がφ2mm以上になると、プレス力を加えても弾性領域での変形にとどまるため、プレス力を解除した途端に銅線が元の形状に戻り、緻密に巻付けられないという課題があった。
現在、最大径φ4mmの太い銅線に対応した全自動巻線機は世の中になく、今回実用化に成功すれば、世界初の商品が実現する。直径φ2mmを越える銅線は剛性が高すぎて、手巻きでの作製ができないため、海外で手巻き生産された安価なコイルとの価格競争に陥る心配はない。また、自動車メーカーからの強い要求があることから、商品化に成功すれば、確実に一定の売り上げが期待できる。さらに次世代エコカーに向けた技術開発という点で、環境負荷削減という昨今の社会的要請にもマッチするものである。
|