放電プラズマ焼結(SPS)法は、原料粉末材料へ加圧しながらパルス通電により焼結する独自手法(図1)であり、これまで金型鋼やステンレス鋼などの金属材料のみならずファインセラミックスや半導体、生体材料などの粉末焼結に適用され、傾斜機能材料や多孔質体などの開発にも活躍している。本技術開発では、金属焼結体以外の焼結・成形のニーズとして、特に近年著しい伸びを見せる赤外レンズやガラスレンズ成形への応用を目指して、SPS法を半導体やガラス材料などの脆性を持つバルク材料の成形加工に適用できる新しい機構とプロセスを具現化するものである。
脆性を持つバルク材料の成形にSPS法を適用するためには、加圧時の衝撃によるクラック発生を避けるために、カウンタバランスにより超低加圧力を得て成形する新機構を開発する(図2)。また、一般のガラス成形よりも低消費エネルギーで効率よく材料を加熱し、低温で成形できる新しい加熱機構と断熱構造を開発する。さらに、バッチ処理を脱却し量産性を確保した構造を実現するために、真空を必要とせず、ダイに開口部を設け、成形材料の装填と成形品の取り出しを迅速化する新構造を開発する。
本技術開発により、単結晶材料、ガラス材料を始め、グリーンシートの成形を可能とすることで、これまでの半導体レンズの除去加工から成形加工へと転換を図り、生産コストや能率を著しく改善することで、車載用レンズやセキュリティ関連分野の赤外レンズの高効率な製造技術の確立とともに、低消費エネルギーと量産性とを両立する効率的なガラスレンズ成形技術を実現することが期待される。


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