精密かつ三次元形状を持つ複雑形状部品の冷間鍛造や、燃料電池セパレータなどの微細パターンを細密にプレス成形するニーズが高まり、従来にない高精度なプレス機の開発が求められている。また、高精度化とともに、量産性を確保するために、高速化の必要性にも迫られている。
本課題では、扇型支持ロッドを用いた新機構プレス機に関わる技術開発であり、従来のコンロッドタイプのプレス機構を廃し、高精度化、プレス機の小型化、およびそれによる高速化が実現できる新しいプレス機構を構成するものである(図1)。本機構は、従来のクランク式機構を有したプレス機の欠点であった下死点などの到達精度、能率などを大幅に改善する扇型支持ロッドを用いた新しいプレス機構であり、コンロッドおよびそのジョイントにかかる荷重を分散して耐久性を増し、短ストローク化を実現することで、上述のような複雑形状や微細パターンを持つプレス部品の量産を可能とする。
一方で、その実現には、2つの扇型支持ロッドを精密同期させることで回転駆動するために、モータの回転運動を伝達する直径約1.5mもの2つの駆動ギアの回転位相を精密に合致させる必要がある。当該駆動ギアの回転軸との固定角度位置の調整は、軸心での調整に困難を極めることから、できるだけ駆動ギアの外径に近い位置での位相調整を行う方法を創案し、精密な調整キーの製作により位相を精密に合致させ、強固に固定する手法を確立するための技術開発を行う。これにより、プレス下死点精度を大幅に改善し、プレス金型の傾斜誤差を著しく低減させることを可能とするものである。
本技術開発により、これまでプレス金型の精度に比し遅れをとっていた精密プレス機の開発を通して、三次元鍛造部品の量産技術を確立することで、我が国の先端産業を牽引することが期待される。
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