沖縄県は、南国風土を生かした果樹や農産物が豊富で、これらには抗酸化力やビタミン、ミネラル等も多量に含まれる。昨今の健康ブームを受け県外からの需要も多く、高品質の健康飲料等が望まれていた。果汁飲料等は、従来から殺菌のために加熱処理されることから、栄養素や風味の劣化が避けられず、本来の天然果汁そのままを提供することができなかった。
本技術開発は、従来の加熱殺菌方法に代わるマイクロ波高電界を応用した飲料向け常温殺菌装置に関するものである。導波管内のアンテナ・充填ノズルにマイクロ波による高電界を発生させ、その中を流下する飲料を加熱することなく殺菌できる(図1)。マイクロ波はアンテナに設けられたスリットから内部に伝搬して電界強度が強められ、充填ノズル内の飲料に含まれる細菌などの細胞膜に1V以上の電圧が加わると高電界(〜 106V/cm)のために細胞膜が物理的に破壊することで死滅させる原理である(図2)。マイクロ波の周波数は電子レンジに使用される2.45GHzではなく、915MHz帯を使うことで発生熱量を少なくできることから、水温の上昇を抑えることができる。
本技術開発の成果を用いたマイクロ波高電界殺菌装置を使用することで、既にミネラルウォーターで実績のある肉薄・超軽量(7g/320ml)キャップレスLEO(Light Ecology Okinawa)ボトル(図3)に、常温殺菌のジュース類を充填できることから、LEOボトルの付加価値と訴求力が格段に向上し、ご当地商品の生産販売量の拡大や雇用促進など地域興しに繋がる。また、『ジュース類は加熱充填しかできない』という従来の固定概念を打ち破り、ビタミンや風味を天然果汁に近づけたままで提供できることで、清涼飲料業界に常識革命を起こすことが期待される。将来的には、牛乳の常温殺菌にも繋がる可能性のあることから、今後の進展も注目される。
|