ボルト締結された構造部材の健全性を維持するためには、ボルトの軸力管理が極めて重要である。一般に、軸力を正確に測定するには超音波ボルト軸力計が用いられ、時間差法と共振法の2方式に大別される。時間差法は超音波パルスをボルト頭部から入射し、反射波が返ってくるまでの伝播時間からボルトの軸長変化を求め、軸力に換算する方法で、共振法は連続した超音波をボルト頭部から入射し、進行波と反射波が合成されて生じる定在波の周波数からボルトの軸長変化を求め、軸力に換算する方法である。しかしながら時間差法は、軸長変化が小さい短いボルトの場合、測定ばらつきが大きくなるという問題があった。また共振法は、狭い周波数域に複数の定在波が出現する長いボルトの場合、目的とする定在波を特定することが難しいという問題があった。
本技術の特徴は、従来の2方式の欠点を補完するハイブリッド測定を実現したことにあり、バースト波すなわち有限波数の超音波を用いる点に新規性がある。測定フローは以下のとおり。
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ボルト軸長より十分短い持続長さのバースト波をボルト頭部から入射し、反射波が返ってくるまでの伝播時間からボルトの軸長変化を求め、軸力に換算する (時間差法) |
(2) |
共振法を適用した場合の定在波の周波数を、(1)で求めた軸力から予測する。 |
(3) |
ボルト軸長の2倍の持続長さをもつバースト波を入射し、入射波が途切れたタイミングでゲートを開き、1回反射波と2回反射波の干渉波をサンプリングする(図1) |
(4) |
(2)で予測した周波数近傍で、干渉波が最大強度を示す周波数を探索し、探索した最大強度周波数からボルトの軸長変化を求め、軸力に換算する (共振法の改良法:「干渉法」と称す。) |
超音波ボルト軸力計は、自動車や鉄道、航空・宇宙、土木・建築、プラント等、様々な分野で使用され、構造部材の健全性確保に重要な役割を果たしている。本技術開発により、従来よりも高安定かつ高精度な軸力測定が可能となり、安全・安心な社会の構築に大きな貢献が期待できる。
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