近年、局地的な集中豪雨による災害が急増しているが、この被害を最小にするためには、早期予測が急務となっている。しかし、現在実施されているラジオゾンデによる計測では、数値天気予報モデルに必要な計測頻度を高めることは困難であった。
本開発は、このために、大気境界層(地上〜高度2km)において15分ごとの水蒸気濃度データを計測できる装置を、ライダー(Light Detection and Ranging 光検出と測距)技術を用いて実現しようとするものである。また、所望の場所でただちに計測できるよう、運搬可能で調整容易なものを目指す。図1にはその装置構成を示した。
ライダーの方式としては、差分吸収によるものとラマン光散乱を用いる方式があるが、前者はレーザ波長の安定性確保が難しく、本開発では後者の方式を用いている。このラマン方式でも、従来のものは355nmあるいは532nmのレーザを用いており、そのラマン散乱光は、昼間は太陽光によるノイズで測定精度が得られなかった。今回は、ソーラーブラインドといわれる太陽光ノイズの小さな266nmを用いる。この波長では、オゾンによる吸収があるが、酸素濃度の同時計測によりこの吸収量の補正を行なう。また、運搬性確保については、これまで申請企業にて獲得されてきた光学系固定方法を活用するとともに、レーザ光と望遠鏡との光軸の調整に独自の工夫を行なう。図2は、これまで京都大学生存研と共同で行なった予備計測であるが、これによると、雲が発生する直前に高濃度の水蒸気が高度400〜600m近傍に存在していることが捉えられている。
本装置が完成すれば、この計測結果と数値予報モデルとを組み合わせることにより、予測精度の大幅な向上が可能となり、局地的災害の被害最小化に大きく貢献できると考えられる。
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