ネオジム磁石は佐川眞人博士が発明した世界最強の永久磁石であり、コンピューターのハードディスクドライブ、医療機器のMRI(磁気共鳴画像装置)、ハイブリッド車など身近なハイテク製品に用いられているが、中心的な原材料であるネオジムは、その大半を中国からの輸入に頼っている貴重な資源である。それにもかかわらず、使用済みのネオジム磁石の回収ルートやリサイクル技術は確立されておらず、現在そのほとんどが廃棄されるか海外に流出している状況にある。
本技術は、ネオジム磁石の製造に用いられているHDDR(水素化-不均化-脱水素-再結合)法と呼ばれる磁石のナノ組織化技術にヒントを得た方法を用いて回収したネオジム磁石を微細化し、これを加水分解、乾燥、還元することで基本成分である鉄、ネオジム、ホウ素を回収するものである。これによって得られる各成分は高純度であり、再利用も容易である。また現在提案されている他のリサイクル技術に比べてプロセスが非常にシンプルであり、水素化に用いる装置もネオジム磁石の製造装置が使用できるというメリットがある。
本技術においては水酸化ネオジム水溶液の乾燥に要するエネルギーの低減など残された課題もあり、リサイクルシステム全体の確立のためには、製品からの磁石の取り出しを含む磁石の回収ルートの確立も必須である。しかし、貴重な資源であるネオジムのリサイクルは将来的に避けて通れない課題であり、このような低コストでの回収技術の確立は重要である。
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