脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の深刻な後遺症のひとつに、手指の機能障害である麻痺がある。しかしながら、介護保険サービスによる作業療法士の治療時間が限られる中、運動療法が不十分なために数多くの患者が手指に麻痺を残したまま、もう一方の健常の手でかばいながら不自由な日常生活を送っている。この状況の改善を目的として、本開発では作業療法士が行う従来の訓練と同様の手指機能訓練を実現するリハビリテーション装置を開発するものである。
開発装置は、手指に装着するグローブ型の装具部と、手指の各所の取り付ける固定具を連結するワイヤケーブルを牽引するユニット、これらを制御する系から構成される。ワイヤケーブルを所定の順序で牽引するアクチュエータ、センサ、コンピュータ回路を備えており、任意の手指に対して各関節の最終可動域まで屈曲と伸展の連続動作を独立して行えることを特徴とする。また、ハード、ソフトの両面から安全機構を設ける。1次試作で2本指用、2次試作で5本指用の装置を制作した上で動作検証を行い、将来的に医療機器における能動型手用他動運動訓練装置としての認可を受ける計画である。 本技術により、脳血管障害患者が在宅もしくはデイサービスにおいて、保険制度の時間的および作業療法士の人的制限によらずに手指関節のリハビリテーションを十分行えるようになることが可能となる。これにより、患者の手指関節運動能力の低下予防と麻痺の回復につながり、生活の質(QOL)の向上や再就労による社会復帰に大きく貢献することが期待される。
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