再生医療においては、対象とする臓器や組織の細胞種を用いて、必要な形やサイズに形成することによって、実際に移植できるようにする必要がある。シート状の生体組織の形成例は一般に知られているが、より立体的かつ複雑な形に作り込む新技術が求められている。
こうした背景において、本新技術開発では、生きた各種細胞等を内部に持つファイバ状の組織である「細胞ファイバ」(図1)の作製とその利用に取り組む。細胞ファイバは、束ねる、織る、編む、巻くなどの構築手法の組み合わせによって、さまざまな形やサイズに作り込むことができる。細胞ファイバの作製において、生きた細胞等を含むコア流、それをハイドロゲルによって被覆するシェル流と、細胞ファイバを連続的に形成するシース流を自在にコントロールして、必要な径および長さに作製する専用ノズルならびにポンプなどからなる生産システムを確立させる。複数の細胞種による細胞ファイバの試作を通して、生産システムのチューニングを図る。さらに、細胞ファイバの保存・輸送に耐える手法、システムを確立する。
本新技術に関わる一連の試作開発を通して、各種細胞ファイバの利用についての知見を得ることを狙い、まずは薬剤検査用途への適用を図る。細胞ファイバは、内部に細胞以外の生物素材を用いることも可能であるとともに、前述のように、さまざまな形態に作り込むことが可能であることから、医療や製薬分野への応用のみならず、食品やロボット素材の分野など、広範囲な用途開拓に利用できると期待される(図2)。
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