歯科医療等で用いられる回転型の医療器具では、加工性と生体適合性に優れる器具への需要が高まっており、超硬合金の活用が進みつつある。しかし、超硬合金はステンレス等に比べて10倍以上のコストであることから、刃部のみに超硬合金を用い、グリップとなる部分にはステンレスを用いて、これを接合して用いている。現在主に行われている職人によるロウ付けの場合には、素材や接合環境による強度変動のリスクがあるとともに、生産性の問題があった。一方で、摩擦圧接接合の場合には、材料の歩留りが低く、後工程が必要となる問題がある。 申請者は、本助成事業において、異種材料を加圧密着させた状態で、通電加熱を行うことで接着する通電拡散接合技術を、直径2mmの超鋼合金とステンレスの接合に適用する。これまでの予備的な接合実験によって、加圧しながら高い電流を45秒間付加することで、医療用手術器具に求められる210MPaの強度の接合をチャンピオンデータとしては達成できているが、強度バラツキが大きい、温度上昇が影響して連続生産ができない等、実用化への課題が明らかになっている。本事業では、外部研究機関の協力を得て、接合面での粗さ、接合面に付着した複層の酸化皮膜の影響等を調べる。また、接合強度を確保するための電流・電圧条件等を探索するとともに、冷却方法を検討して、安定な強度の接合を連続的に実現できる工程とそれを実現するための治具等を試作する。 接合強度バラツキを10%以下とできる生産性の高い接合技術を確立することができれば、不具合があると人体損傷や体内残留等の事故に繋がることから確実な接合を求める医療器具事業のユーザーの要望に応えることが可能となる。将来的に自動化を進めることが可能となり、生産性の向上を通じて、医療技術の高度化、QOLの向上に寄与することが期待される。更に、こうした異種金属接合の技術は、将来的には高性能のエンジンバルブ等の生産にも適用できると期待されることから、省エネルギー・環境調和型の社会の実現にも繋がる。
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