電子デバイスの製造プロセスには様々な成膜手法が用いられており、ウェット成膜においてはスピンコート法が主流である。しかし、スピンコート法は塗布材料の利用効率が悪く、ウェハ全体に塗布されてしまうためエッジリンス処理が不可欠であるなどの改善すべき課題を抱えている。このため、塗布材料の利用効率が高く、スピンコート法の欠点をカバーできる新しい成膜手法が求められていた。
上記問題を解決する手法としてスリットコート法の高度化に着目した。スリットコート法は古くから実用化された成膜技術であるが、塗布の始点と終点の膜厚が安定しない、長方形以外の形状の塗布が難しい等の難点があった。本技術では、塗布ヘッド内における塗布材料の圧力変化と塗布速度を高精度に制御することにより、始点、終点を含めた膜厚の安定制御を可能とし、枚葉基板に対応できる塗布技術を確立した。加えて、これまで、塗布形状は矩形に限定されていたが、本技術では塗布可変幅塗布ヘッドを開発し、ウェハ等円形基板の内側に円形に塗布することを可能にする(図1,2)。
本技術開発により、今後、ウェハ状の円形基板への円形塗布はもとより任意の塗布形状の塗布形成が可能となる。また本手法では、塗布材料をほとんど無駄にすることがないため、高価な塗布材料の場合、コストダウン率が高い。加えて、エッジリンス等の追加が不要なため、プロセスの簡略化が可能となる。今後、当該技術はパワー半導体で用いられる保護膜や一般電子部品の誘電体膜、多層基板の貼り合わせのための接着剤塗布など、様々な分野への適用が期待される。
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