レーザー装置、カメラなどの光学機器には反射防止、バンドパスフィルターなど様々な光学特性を持った薄膜が使われており、それらは屈折率の異なる物質を多層に積み重ねることにより製造されている。しかし1.37以下の超低屈折率を持つ材料がないこと、異種材料を積層させると膜応力が発生し、膜の損傷にいたる場合があるなど、製造上の問題点を抱えており、その解決が求められていた。
本課題ではテフロンを抵抗加熱で、フッ化物や酸化物を電子ビーム照射により真空中で蒸発させ、約200℃で基板上に同時に蒸着することで、隙間を持ったポーラスな薄膜を製造する技術(図1)を開発する。これにより超低屈折率とその連続的制御が実現可能となるとともに、膜応力も大幅に低減できるため誘電体薄膜との多層化においてもひび割れや剥離などを起こすことなく均一で高品質の膜形成が可能となる。開発では基板と原料ボートの位置の最適化、回転機構の付加などを行い、ポーラス膜を安定に製造する技術を確立する。多層化については膜厚計により蒸着中の膜厚をモニターしながら成膜し、多層構造の精密制御を行う。
本課題により超低屈折率ポーラス膜と誘電体高反射ミラーを製造する技術が確立されれば、光学薄膜の設計、製造に大きなインパクトを与えると予想される。具体的用途としては、レーザー核融合・加速器研究用の高出力レーザー対応広帯域ミラーや偏光子への適用が有望と考えられる。また歯科、眼科、脳細胞手術用の赤外域レーザー用の光学素子への応用も期待できる。
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