弊社は30年に渡りセキュリティー市場に向けたセンサーと映像機器の開発、製造、販売を行ってきたメーカーでございます。今回、財団の助成を頂きながら開発に取り組みましたセンサーは、急速に進む高齢化社会と、エコ社会への大きな動きにお役立ち出来るセンサーを世に送り出すためのものです。
センサーと言いましても様々なセンサーが市場には溢れておりますが、今回私共が着目したのはセキュリティー業界では非常にオーソドックスなパッシブセンサーです。このセンサーに使用される焦電素子は10μmを中心とした遠赤外波長を受け、その電磁波エネルギーの変化量に応じた電気信号を出力できる特性を有し、古くから様々な光学系と組み合わせ広範囲な人の動きを捉える素子として定着致しました。しかし、残念なことに30年以上に渡りこの素子を応用したセンサーの基本性能は変ることなく現在に至っております。今までのパッシブセンサーはセンサー同士の干渉が無く、低消費電流で動くなどのメリットがある反面、静止した人や、移動する方向などによってセンサーの検知性能が左右され、悪くすれば検知出来ないなどの欠点を持っております。この欠点は、侵入して来た人間だけを単に検出するというセキュリティー市場では大きな問題となりませんが、介護施設や、オフィスなど人の動きがゆっくり、または静止している環境で、人の存在を把握する用途としては満足のゆくものではありませんでした。
そこで、私共は従来とは発想を変えた特殊な光学機構と、焦電素子を組合せ、半径12m、視野角90度の範囲に居る人(温度差1.5℃以上)を、移動、静止に関わらず、水平方向2度の分解能、センサーからの距離を5段階に識別出来るスキャニング方式を研究して参りました。そして、スキャニングによって生ずるノイズ成分を抑制し、室内の放射エネルギー量を忠実にサンプリングできる光学機構と、それに対応したソフトウェアーを組合せることによって、人の位置や移動情報を安定的に把握するセンサーを実現させることが出来ました。このセンサーによりまして、例えば人の位置情報によるオフィスの照明、空調設備の肌理細やかな制御など人に優しい環境作りにご利用頂く、また、ご高齢者の具合が悪くなられ動けなくなるなど、介護施設などでの見守り用として、プライバシーを守りながら安全、安心、快適な環境作りのお手伝いが出来る可能性を秘めたセンサーです。
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