助成テーマ完了認定企業紹介 049
第101回 平成30年度第1次助成テーマ
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開発技術の概要 |
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光電子分光は、X線やレーザを試料に照射し発生する電子(光電子)のエネルギスペクトルから物質の電子状態を計測する技術です。特に、注目されているのが角度分解光電子分光ARPES(Angle-Resolved PhotoEmission Spectroscopy)と呼ばれる方法であり、物質のバンド構造を直視出来ることから最先端の分析機器としてその利用が拡大しています。トポロジカル絶縁体、フラーレン、グラフェンなどの近年の新規材料研究に大きく貢献している分析技術です。 光電子分光の研究においては、エネルギ分解能を高め、より細部にわたるバンド構造を明らかにするという取り組みが進展しています。その分解能向上には、X線や放射光よりもスペクトル幅が狭いレーザが適しており、実用上は高い光子エネルギを持つ深紫外レーザが必要になります。これまで主に用いられてきた励起光源は深紫外領域のパルスレーザでしたが、最近の研究により、より高精度・高感度測定を実現するためには、連続波レーザが好適であることが分かってきました。 本技術開発は、このニーズに応えた光電子分光用途の連続波深紫外レーザ光源(波長213nm)を実現し、材料開発を加速する分析技術の創出に寄与するものです。 光電子分光装置で必要とされる連続波深紫外レーザ光源には、可搬かつ設置・調整の容易さと長時間安定した出力が求められています。そのような要求に応えるために、852nmのレーザダイオード(LD)を基本波光源に用い、2段階の第2次高調波発生により213nmを発生するレーザを開発しました。特に、本開発では高調波発生に当社が保有する独自の共振器波長変換技術を適用することで、コンパクトで高効率に連続波深紫外光を発生させています。また安定なレーザ発振を実現するため高速動作が可能なピエゾアクチュエータを共振器長制御に導入し、0.8%以下の出力変動かつ3時間以上の無瞬断動作を実現しました。さらに当社の独自技術である高品質で対損傷性に優れる波長変換結晶BBOを用いることで、光源の高出力化や長期安定性の向上を推進していきます。 今後は、本開発成果をもとに2020年3月に連続発振213nmレーザの製品化を予定しています。これによりよりエネルギ分解能の高い光電子分光技術が普及し、新規材料開発を加速するものと期待しています。
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これからの計画 |
今回の開発技術を基盤とし、2020年3月の製品化を目指して開発を継続していきます。 |
企業からのお願い |
本技術開発のレーザ光源は連続発振213nmですが、よりエネルギの高い(11eV、114nm)のパルスレーザも商品化しています。さらに266nm、355nmの高出力レーザもラインナップしておりますので、光電子分光以外の用途でも深紫外・真空紫外のレーザ光源にご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。
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