現在、糖尿病患者用ウエアラブル輸液ポンプ(インスリンポンプ)は高価なため普及が進まず、大多数の患者は、インスリンを一日に数回、自己注射しています。間欠的な投与のため、安定的な血糖管理が困難な状況です。本技術開発は、この課題の解決を目指し、安価で携帯性に優れ、またディスポーザブル部の交換も容易な超小型ポンプを実現しました。
送液部分は、輸液チューブ自体を押しつぶしながらローラーが回転する平面型蠕動ポンプの機構で、低価格化を可能にするとともに、ディスポ部の交換を容易にしています。経済性と操作性の両面で、インスリンポンプの普及を後押しします。そして極微量の薬液を連続的に送液できるポンプを常時装着することで、体内の分泌により近い安定的・持続的な投与が可能になり、治療効果も向上が期待されます。
DCモータータイプとステッピングモータータイプの2種類を開発しました。前者はより低価格であるとともに低消費電力で、駆動用バッテリーの軽量化、ひいては携帯性に優れます。後者は、流量のダイナミックレンジが広く、かつ、特に低流量域で精度に優れ、例えば鎮痛、疼痛管理、栄養管理など、インスリン以外のドラッグデリバリーにも適します。
この超小型ポンプにより、インスリンポンプの低価格化と操作性の向上を図ることで、結果としてより多くの糖尿病患者のQOL改善に貢献できるものと考えます。そしてその貢献は日本に留まらず、これから爆発的な増加が懸念される海外諸国での糖尿病患者の治療にも及び、SDGsのひとつ「すべての人に健康と福祉を」の達成にも役立つものと考えます。
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