植物研究助成

植物研究助成 18-02

伊豆半島および伊豆七島を中心としたオオハナワラビ属の種分化に関する研究

代表研究者 千葉大学 大学院園芸学研究科
助教 上原 浩一

背景

 シダ植物のオオハナワラビ属は日本に9種が分布する。その中で伊豆半島と伊豆諸島には固有種2種を含む5種が分布し、多くの推定自然雑種が存在する。同属の分類に関しては、共同研究者の佐橋が多くの記載を行い、分類学的研究データはそろっている。しかし、多くの雑種の存在も示すように中間的な形態の個体も多く、研究の発展にはDNA解析による分子系統学的データが不可欠と考えられる。

目的

 本研究は、佐橋による分類学的知見にマイクロサテライト多型解析・SSCP解析を導入することで、植物研究園を含む伊豆地方の、オオハナワラビ属の生殖様式、局地的種分化とその進化について明らかにすることを目的とする。

方法

 核DNAを用いたSSCP解析(一本鎖構造多型解析)は、シダ植物の種間関係、及び推定雑種の遺伝子型を明らかにするのに有効である。これまでにオオハナワラビ属のGapCp遺伝子、RpB2遺伝子のPCRプライマーを作成した。これらを用いてオオハナワラビ属内の種間関係、遺伝的構造を明らかにするとともに、配偶体や幼胞子体の同定を行う。マイクロサテライト解析はフユノハナワラビとシチトウハナワラビから7つのマーカーを開発した。解析を進めた結果、2倍体種でマーカーを作成する必要が生じたため、その開発を進める。作成したマーカーを用いて集団間の遺伝的関係、生殖様式、同種を母種とする雑種との関係など、より詳細な種分化を明らかにする。

期待される成果

 申請者はSSCPとマイクロサテライトを併用することでシダ植物特有の配偶体の同定および個体識別、親子判定が可能なことに着目し、配偶体と胞子体が独立したシダ植物に特有な生殖様式が明らかにすることを目標に研究を行ってきた。18年度末に伊豆大島でシチトウハナワラビ(6倍体)の胞子体+配偶体集団を見つけ解析を行ってきたが、6倍体種はマイクロサテライト解析に制限が生じたため19年度は2倍体種の胞子体+配偶体集団の探索に全力を挙げた。そしてついにアカハナワラビ、フユノハナワラビが混成するきわめて有望な集団を発見したため、その集団を用いた解析に全力を挙げる。本研究でオオハナワラビ集団の生殖が明らかになることが期待される。