植物研究助成

植物研究助成 18-11

物理的特異立地における植生と植物の物理特性ならびに植物研究園に形成された環境保全林の生長挙動に関する研究

代表研究者 (財)地球環境戦略研究機関 国際生態学センター
主任研究員 目黒 伸一

背景

 これまで植物の生存、生産を規定する要因として主に環境条件や生物間の関係などの視点から研究が広く行われてきた。しかし、植物或いは植物群落が有する物理的特性、特に力学的物性値の定量的計測による生態特性の把握は国内外を問わず未だほとんど行われていない。植物が生育するには、植物個体の連続する各部位において、その周辺を力学的に支える必要がある。さらに植生を構成する主な樹種群は、力学的優位性を有することにより、その植物が立地における生態的地位を獲得していることが予想される。

目的

 本研究では、負荷過程による植物の物理特性を把握し、かつそれに応じた植物個体部位の生長特性、形態形成および物理特性と生態地位、植生成立の物理特性的要因の関係を明らかにすることを目的とする。

方法

 植生学的知見に基づいて形成されている環境保全林の存在位置確認および現状を調査し、主な樹木の生育機構を測定する。同時に、植物研究園内樹林を調査し、比較検討する。
 また、植物研究園と自然立地の樹林の力学的強度、形態実験・計測に供すべき植物およびその器官、立地を選定し、サンプル樹種の計測、比較を行う。強度試験は3点曲げの静的負荷によりひずみ、応力、破壊強度、ひずみエネルギー等を計測し、その生態特性の解明を行う。
 特に伊豆半島が北限である、まとまったウバメガシ林を調査し、その風衝立地と樹木物性について検討する。

期待される成果

 本研究により自然災害に対する林分が有する抵抗性を植物個体レベルから予見でき、自然樹木、樹林を用いた防災・自然環境保全・管理方法への定量化の先駆けとなる。例えば風衝地、多雪地、流水辺、落石崩落地などで災害防止の植物による効果的利用、特殊環境下における林分の物質生産特性、生態的地位の新たな知見の獲得などが期待できる。従って台風、豪雪、河川の氾濫、斜面崩壊などの自然災害対策や環境保全機能として植物を利用する際の有益な情報を提供する、という社会貢献の側面も成果として期待される。