植物研究助成

植物研究助成 18-13

植物群落の環境と植物生体情報の3次元計測法の開発

代表研究者 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
農業施設工学チーム長 佐瀬 勘紀

背景

 わが国の施設園芸の改善策の一つは、施設をより大型化し、コスト低減をはかり競争力を強化することである。しかし、大型化すると環境の分布が顕著になるため、環境の均一化も考慮して環境制御をする必要がある。従来の手法では、一ヶ所、しかも、気温のみの測定に基づく制御がほとんどであり、根本的な改善が必要である。二酸化炭素濃度や湿度についても栽培期間を通しての計測とモニタリングが必要である。また、植物情報としての群落温度の計測は最近まで行われて来なかった。施設の大型化の動向に対してセンサー技術は遅れているといっても過言ではない。近年、センサー素子の開発・進歩は著しく、施設園芸に安価に応用が可能になりつつある。

目的

 温室の床面積が1ha以上の大規模栽培において、温室内の環境条件と植物生体情報の分布を総合的にかつ3次元的に計測でき、実用規模で使用可能な手法を開発する。植物の存在も念頭に置き、気温、湿度、二酸化炭素濃度、植物群落温度、植物群落受光量などを計測の対象とする。

方法

 初年度(平成20年度)は、二酸化炭素が特定波長の赤外線を吸収する性質を利用して開放型の二酸化炭素センサーを試作した。低ノイズアンプやマイコンを導入し、特に、2号機では、S/N比の向上のための改良を行った結果、実験室レベルで二酸化炭素濃度の標準偏差を22ppmに低減できた。この小型の筺体は、他のセンサーも組み込み可能なように設計した。該当年度(平成21年度)は、温室環境下での二酸化炭素濃度の測定精度を検討する。一方、他のセンサーについても測定の原理や設計の検討を行ってきたので、具体的な試作や性能の検討を行う。気温測定については、レスポンスを改善するため、細線型の原理を応用してセンサーを製作する。植物群落受光量に関しては、太陽高度が低く群落側面からの日射がある場合、従来の水平面での受光量測定では、群落の受光量を忠実に把握し得ない。そこで、全方位型のセンサーを開発する。湿度に関しては、音の共鳴が湿度と温度の関数であることなど、利用できる原理と方法を検討する。いずれのセンサーも前述の筺体に組み込めるよう、小型軽量に配慮する。

期待される成果

 施設園芸のセンサー技術において今回のような手法の開発はまったく行われておらず、世界的にも希有である。大型化された温室の環境制御や環境のモニタリングに不可欠なセンサー技術として応用・実用化が期待できる。