植物研究助成

植物研究助成 18-16

クロロフィル蛍光画像計測による個体〜群落対象の光合成機能評価

代表研究者 愛媛大学 農学部
講師 高山 弘太郎

背景

 地球規模において喫緊の課題となっている緑の保全,人工的空間における緑化植物の維持管理,さらには農業における生産性向上など様々な場面において,植物の状態を的確に把握するための植物診断技術へのニーズが高まっている。特に,人間の目では確認することができない不可視の生理機能障害をできるだけ早期に検知する技術が求められている。

目的

 本申請では,平成20年度の本助成研究において開発した“弱光励起インダクション法”を用いて,大規模施設等で栽培されている植物群落を対象とした光合成機能評価を行うためのChl蛍光画像計測システムの開発と,このシステムを用いた植物診断技術の確立を目指す。

方法

(1) 植物群落を対象としたChl蛍光画像計測システムの開発
 大規模施設内で栽培されているトマト群落を対象とした光合成機能評価が可能なChl蛍光画像計測システムの開発を行う。光合成機能は,“弱光励起インダクション法”により評価するが,計測システムに近接する植物体を対象としたChl蛍光画像計測を達成するために,蛍光励起用の光源にはLEDアレイを使用し,撮影用レンズには広角レンズを用いる。さらに,Chl蛍光画像計測を行いながら施設内を移動するための走行装置の開発を行う。また,Chl蛍光画像をリアルタイムに解析し,群落内における光合成機能マップを作成するソフトウェアの開発も行う。
(2) Chl蛍光画像計測システムによる群落を対象とした植物診断
 (1)で開発したChl蛍光画像計測システムを用いて,施設内で栽培されているトマト群落を対象とした光合成機能のモニタリングを行う。並行して,個葉のChl濃度,光合成能力(光―光合成曲線)および生長量も定期的に測定し,Chl蛍光画像計測に基づいた群落対象の植物診断技術の確立を目指す。さらに,収穫量,果実品質(糖度等)の測定も行い,Chl蛍光画像計測による植物診断に基づいた収量予測についても検討する。
 

期待される成果

 本研究により開発されるChl蛍光画像計測システムの特徴は,個体および群落における光合成機能の分布を,非破壊かつ非接触で簡便にモニタリングできる点である。本システムを利用することで,不可視の光合成機能障害の検知が可能となり,より早い段階で適切な対策を講じることが可能となる。たとえば,新しい食料生産システムとして注目されている植物工場における環境制御のための植物診断技術としての利用などが期待される。