
植物研究助成 24-01
伊豆半島菌類の生物活性物質生産菌としての有用性に関する研究
代表研究者 | 北里大学 北里生命科学研究所 助教 野中 健一 |
【 背景 】 |
過去に一度も大陸と地続きになった歴史を持たない海洋島は、その特殊な環境故に動植物ともに固有種が多く、生物相が本土と大きく異なっている。この事は植物と関連の深い菌類にもあてはまり、申請者は海洋島である伊豆諸島、小笠原諸島の6島と本州の間では菌類相が大きく異なる事を明らかとし、多くの有用物質の発見につなげて来た。伊豆半島もかつては海洋島であり約60万年前に本州に衝突したと推定されている。植物においては60万年経った現在でも伊豆半島にしか生息していない固有種が多く存在する。しかし、目に見えない菌類については知見が乏しいのが現状である。 |
【 目的 】 |
伊豆半島が海洋島独特の菌類相を維持しているかについて明らかにする事を目的とする。本州と伊豆諸島の各島とでは生息している菌類が大きく異なっているため、本州と衝突した箇所に近い伊豆半島北部の熱海市周辺とそこから離れている伊豆半島南部の下田市付近および最も近い海洋島である伊豆大島、さらに伊豆半島に比較的近い本土の地域である長野県、神奈川県、東京都の植物根本周辺の土壌に生息している菌類の分布パターンの比較から明らかとする。本申請では土壌中に広く生息している不完全菌類を対象とする。 |
【 方法 】 | ||||||
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【 期待される成果 】 |
菌類からは医薬品を始め多くの有用物質が発見されている。菌類の種と生産される化合物の間には高い相関があるため、未知種や珍しい菌類であれば新しい有用物質を生産する可能性が高い。申請者らは日本本土に比べ海洋島から未知糸状菌が発見される割合が高いことを明らかとし、海洋島由来の糸状菌から30以上の新しい物質を発見してきた。伊豆半島の菌類相がかつて海洋島であった頃に近い状態であれば、伊豆諸島等と同様に多くの有用物質が発見される事が期待される。 |