植物研究助成

植物研究助成 25-01

根圏・植物内生微生物を利用した環境調和型生物農薬の開発

代表研究者 大阪大学 生物工学国際交流センター
准教授 木谷 茂

背景

 収量・品質を追求する化学農薬の濫用は、社会問題となるヒト薬剤耐性菌を発生させるだけでなく、植物生長を促す微生物までも死滅させ、環境生態系を乱すことが危惧されている。この化学農薬に代わる次世代型農薬として、近年、微生物を利用した生物農薬が注目されている。自然環境に由来する生物農薬は、化学農薬と比べ植物病原菌に抵抗性を生じさせることは少なく、植物生長に有益な微生物を駆逐しない。また、生物農薬は有機栽培に適用可能な付加価値を産み出し、その使用は環境保全型農業へと結びつくと期待される。生物農薬として利用されてきた微生物は単純な土壌から分離されてきたが、その植物定着性が疑問視されている。そこで、植物体内または植物根圏に生息する微生物を利用すれば、定着率の問題を克服し、実用的な生物農薬の開発へと繋がると考えられる。

目的

 植物の体内またはその根圏には固有の微生物群が生息しているため、豊かな植生環境が微生物分離源として要求される。一方、伊豆諸島は伊豆半島とは地理学的に異なり、各島に多種多様な植物が生息している。本研究では、独特かつ豊かな植生環境を育んでいる伊豆四島と伊豆半島にて採集した植物とその根圏土壌から植物関連微生物を分離する。次に、抗植物病原菌作用の解析を通じて、分離微生物の生物農薬としての評価を行う。

方法

 伊豆四島、植物研究園を中心とする熱海市と下田市にて植物とその根元の土壌を採集し、植物内生微生物と根圏微生物を様々な培地により分離する。分離微生物の多様性を明らかにするため、16S rDNA情報を解析し、分離微生物の属種を同定する。植物病原菌に対する生育阻害能を指標にし、抗病原菌物質を生産する微生物を同定する。次に、抗病原菌物質の化学構造を機器分析により同定する。

期待される成果

  本研究により、環境生態系を乱さない、つまり環境調和型生物農薬となる微生物を見出せ、その抗植物病原菌作用を発揮する物質が同定できる。これらの微生物と作用物質は、環境に優しい農作物栽培法に貢献することが期待される。