植物研究助成

植物研究助成 25-04

シダ植物小葉類から探る根と茎の形態進化

代表研究者 日本女子大学 理学部 物質生物科学科
助教 藤浪 理恵子

背景

 植物の根、茎、葉は全ての維管束植物(シダ植物小葉類と大葉類、裸子植物、被子植物)がもつ重要な器官である。陸上植物の形態進化において、1本の単純な軸をもつコケ植物段階から維管束植物段階へと進化した時、軸が二又状に分枝し、その後、主軸の形成や軸の扁平化、有限成長化が生じたことによって茎、葉、根が進化したと推定されている(テロム説)。したがって、維管束植物の3器官の形態進化を知るためには、軸の分枝の進化過程を明らかにすることが必要不可欠である。

目的

 維管束植物の系統関係で、シダ植物小葉類は基部に位置するグループである。小葉類の根は、他の維管束植物が側根を内生的に形成するのに対し、根頂端分裂組織が二分し、外生的に二又分枝する。この特徴は、全ての維管束植物の茎が外生的に分枝する様式と同じである。したがって、小葉類は系統的にも形態的にも根と茎の進化を明らかにする上で重要なグループであると考えられる。本研究では、小葉類の根と茎の頂端分裂組織の構造と分枝様式を発生解剖学的・分子遺伝学的に解析し、他の維管束植物との比較を行い、根と茎の形態進化過程を明らかにすることを目的とする。

方法

 静岡県函南原生林に生育するヒカゲノカズラ科トウゲシバ、京都府清滝川周辺のヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ、東京都小石川植物園内のイワヒバ科コンテリクラマゴケを用いて、根と茎の分枝の形成メカニズムを以下の方法で解析を行う。1)EdU蛍光染色法を用いて根の細胞分裂動態と分枝様式を明らかにする。2)根と茎の頂端部と分枝部で発現、機能する遺伝子群を小葉類で単離し、RNA in situ hybridization 法による発現解析を行い、RAMとSAMの構造維持機構と分枝メカニズムを明らかにする。

期待される成果

 本研究を遂行することで、小葉類の根と茎の構造維持機構が明らかになるだけではなく、維管束植物全体の根と茎の分子遺伝学的メカニズムの進化の理解に対して大きな貢献になる。さらに、化石植物やデータの不足のために未だ明らかにされていない根の形態進化に関してもアプローチできると期待される。