植物研究助成

植物研究助成 25-15

低空撮影画像による花粉症原因樹木の着花評価技術の開発

代表研究者 森林総合研究所 森林植生研究領域
チーム長(花粉動態担当) 倉本 惠生

背景

 花粉症は国民の多くが罹患する重要な社会問題であり、本州以南ではスギ・ヒノキ、北海道ではカバノキ科(シラカンバの仲間)の花粉が主原因となっている。一般にシラカバ花粉症の名で知られるカバノキ科花粉症は、シラカンバに限らずカバノキ科の多くの樹種が原因となる。雄花の着花量は年・地域・個体差があり、その態様は樹種によっても異なる。花粉の量を予測するため、前年に雄花の芽の量を評価する調査が実施されているが、現状ではシラカンバに限られているため、シラカンバの着花が少なく他の樹種が多い場合には予測にならない。現在の方法は習熟した観察者が現地に赴き1本ずつ調査しており、多種多点での適用は限界がある。

目的

 本課題では習熟者による現地での目視に替わって多種多点での着花評価を行う方法として、低高度撮影画像を利用した着花評価技術を開発することを目的とする。そのために、個々の木の樹冠が判別できる高さで任意の時期と場所で飛行撮影が行える利点を持つ「自律無人機(UAV)」を利用する。

方法

 カバノキ科では地上からの目視評価と飛散花粉量との関連が確認されており、労力はともかく精度は保証されている。地上目視評価の樹種・地点・個体間の差異を表現するための飛行撮影方法(飛行高度・時期など)を検討する。飛行時期や高度を変えた撮影を試行して、画像の判別に適した撮影方法を求める。また、画像から、雄花の着花密度や雄花の着生範囲を評価する方法を構築する。さらに効率化のため、画像中の占有領域や色調から着花量を推定できるか検討する。同じ場所での樹種・個体間の比較や、着花状況の異なる場所間で比較を行う。

期待される効果

 習熟者が現地で1本ずつ確認する必要がなくなり、多種多点で取得された画像からの判読が可能になるため、樹種の開花時期や分布域を考慮した患者や医療機関に有益な情報を、手間をかけずに取得できる。また、スギ・ヒノキの着花やどんぐりのなり具合の評価についても応用の道が開ける。