植物研究助成

植物研究助成 29-11

植物群における個体間情報伝達を自動的に定量する技術の開発

代表研究者 筑波大学 生命環境系
助教 木下 奈都子

背景

 植物生態系を包括的に理解するためには、植物個体間の相互作用に関する理解が欠かせない。分子生物学によって個体「内」での情報伝達に関する知見は豊富な蓄積があるにも関わらず、個体「間」の情報伝達に関しては、その分子レベルでの詳細な動態は未だ不明である。
 申請者のグループでは、市村清新技術財団からの助成を受けて、非破壊的な方法で昆虫からの食害に関する分子応答を解析するモデル実験系を構築した。しかし、植物の生態を左右する重要な要因として、昆虫の他に病原菌といった微生物が挙げられる。

目的

 植物と微生物の相互作用を分子レベルで計測することで、目に見えない微生物と植物の生き様を明らかにする。

方法

 植物サンプルに微生物を感染し、病原菌ストレスに応答してその発現レベルが著しく上昇する遺伝子をピックアップする。単離した遺伝子に関して、その上流に位置し発現レベルを制御する配列を用いて、病原菌ストレスの分子応答を可視化できる実験系を構築する。同時に細胞内で外界のストレス情報を伝達する低分子メッセンジャーを可視化することで、より詳細な応答を計測することができる。

期待される成果

 植物生態系に微生物は欠かせない存在である。このため、植物との相互作用を目視できる前に遡って計測することで、植物-微生物のダイナミックな相互作用を捉えることができる。これをスケールアップすることで、微生物が森林の中でどのように広がっていくのかなど、森林を再生する際に有用な知見が得られることが期待できる。