植物研究助成 29-19
植物体内におけるリンの分配の改変によるリン資源循環型イネの作出と検証
代表研究者 | 農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター ユニット長 溝淵 律子 |
【 背景 】 |
リン鉱石はモロッコや中国などの限られた地域に偏在し、約90年後に枯渇する可能性が指摘されている。リン鉱石のほとんどがリン肥料の原料として使用されていることから、生産性を低下させずにリン肥料を大幅に削減できるような植物の育成が緊急の課題である。一方、イネ科穀物中のリンは主にフィチン酸塩という非反芻動物では消化できない形で蓄積するため、排出されたリンが水系の富栄養化を起こしている。また、フィチン酸は腸内でカルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル栄養素と結合し、それらの吸収を阻害する。本研究では、植物体内でのリンの分配を改変し、リン資源循環型イネを作出する。 |
【 目的 】 |
本研究の最終目標は、リン肥料の節約と排泄物中へのリンの流出阻止を実現するリン資源循環型イネの作出である。その実現のために本課題では、植物体内でのリンの分配先を決めるスイッチ(輸送体)遺伝子に関する変異遺伝子および玄米の可消化型リン(無機リン)を増やす変異遺伝子を低フィチン酸・高可消化型リン品種へ導入した系統を作出し、その稲わらを土壌にすき込んだ際のリンの還元効果および低フィチン酸玄米を鶏に給与した場合の排泄物中へのリンの低減効果を明らかにする。 |
【 方法 】 |
|
【 期待される成果 】 |
我が国では、湖沼を有する滋賀県や茨城県では有機物除去を中心とする通常の下水処理に加え、リンの除去を目的とする高度処理を行っている。このような社会状況から、下水に流失するリンを大幅に削減させることが環境負荷低減社会の創造という観点からも必要である。本研究により、低フィチン酸イネ品種を育成することができれば、リン肥料の節約、排泄物中へのリンの流出阻止、玄米の低フィチン酸化による栄養吸収改善に貢献できる。 |