植物研究助成 29-23
環境保全林の生長と防火機能に関する実験研究 その2
代表研究者 | 公益財団法人地球環境戦略研究機関 国際生態学センター 主任研究員 林 寿則 |
【 背景 】 |
1970年代より広く普及している「環境保全林」の造成は、植樹本数4,000万本を越える実績を積み重ね、樹高20mを越える森林も生育するようになった。その一方、樹木の生長について長期間にわたり調査している事例が少ないことから、苗木の生長過程や森林としての発達に関する評価手法は確立されていない。また、我が国では、近年、自然災害が多発しており、環境保全林を含む森林が有する減災機能への期待は一層高まっている。 |
【 目的 】 |
熱海植物研究園をはじめとする日本の各地域に植樹された苗木の現時点における樹高・根元径や胸高直径の測定と既存資料の収集・解析に基づいて、環境保全林の構造に関する発達過程を時間軸に沿って定量的に評価する。また、環境保全林に広く導入されている高木性樹種及び都市域の街路樹・公園樹に多用されている樹木の樹葉含水率や耐火性・燃え難さに関する評価を試みる。 |
【 方法 】 |
日本各地に造成された環境保全林の生長調査(樹高、根元径、胸高直径の測定)を実施する。特に調査資料が少ない初期(1970〜1990年代)に造成された地域の生長調査を行い、既存のデータを加えて、環境保全林の生長経過を比較・評価する。樹木の防火機能については、樹葉含水率計測と小型電気炉を用いた加熱実験、さらに接炎環境における耐火性に関する基礎データを収集する。 |
【 期待される成果 】 |
環境保全林の生長・構造について、体系的に整理し評価することができる。さらにデータを蓄積することにより、地域や樹種ごとの生長特性、海外における植樹と日本の事例を定量的に比較・評価することも可能になる。 防火機能に関する実験研究からは、火災延焼防止に寄与した樹種や環境保全林に導入される樹種、都市域に多く植栽されている樹種の防火機能に関する基礎データ(含水率、耐熱性、耐炎性など)を蓄積できる。 |