植物研究助成

植物研究助成 30-09

水収支法で求めた換気率を利用した局所CO2施用温室の群落光合成速度のモニタリング

代表研究者 岐阜大学 応用生物科学部生産環境科学課程
教授 嶋津 光鑑

背景

 施設園芸は、栽培作物の純光合成速度を高めるために日射量、温度、CO2濃度、湿度などを制御する。日射量の多い時間帯の温室内は、作物が光合成反応でCO2を吸収するので、外気よりCO2濃度が大きく低下する。室内を外気より高濃度にCO2施用すると光合成速度は高まるが、その時間帯は同時に換気窓を開放して温度管理するため、供給CO2ガスの流出量も増加し、費用対効果は必ずしも高くないので、CO2施用は日射量も少なく換気窓が開放さない時間帯や冷房しても収益が得られる栽培に制限されている。ところで、生化学・ガス拡散をベースとした光合成シミュレーションによると、換気窓開放時間において、温室内CO2濃度を外気と同程度に高めるだけでも、午前中の日射の少ない時間帯のみの高CO2濃度施用と同程度またはそれ以上の日積算光合成量が見積もられている。

目的

 本研究は、換気窓開放時間帯の温室内CO2濃度を、群落付近は外気よりも高く、換気窓付近は外気程度に制御し、CO2利用効率と純光合成速度が高い局所CO2施用法を開発する。同時に温室内群落全体の純光合成速度をリアルタイムで計測する技術と理論を確立し、日積算光合成量の長期モニタリングを実現する。

方法

水蒸気収支法による高精度の換気率測定法を実現するために、果菜類の蒸散量の短時間応答の測定として、1)少量培地耕への給液の重量測定、2)サーモカメラで測定した群落葉温を指標にした蒸散量算定法を比較する。
①で得られた換気率をCO2収支法に代入して群落の純光合成速度を算定し、リーフチャンバー型光合成測定装置の値と比較してその妥当性を検証する。
局所CO2施用時の群落内CO2拡散の評価法を、無植栽温室、模型植物を配置した温室、群落が存在する温室の換気率(LAIは複数)において実施する。
純光合成速度の1)実測定値と、2)温室内の光量、温度、CO2濃度、拡散抵抗を入力値とした光合成生化学モデルの推定値を比較する。

期待される成果

 ②〜④から、局所CO2施用する自然換気温室内作物の純光合成速度およびCO2利用効率の高いCO2供給速度を算定するための理論・制御方式を提案する。