植物研究助成

植物研究助成 30-11

オゾンとNOxの同時フラックス計測装置の開発と森林観測への応用

代表研究者 帝京科学大学 生命環境学部 自然環境学科
准教授 和田 龍一

背景

 近年国内の森林は、大陸から輸送された窒素酸化物などの大気汚染物質から生成したオゾンによって悪影響を受け、成長が阻害されていることが報告された。大陸からの輸送だけでなく、国内の都市域にて発生した窒素酸化物も大気化学反応を通してオゾンを生成する。森林におけるオゾンとその前駆体である窒素酸化物の放出・沈着吸収量(フラックス)の日変化と季節変化を定量的に明らかにし、これら物質の変動要因を解明することは、地球規模でのオゾンと窒素酸化物の発生源と吸収源の理解、および国内での大気環境と森林環境の保全に必要である。

目的

 本研究では、渦相関法によりオゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)のフラックスを同時にかつ高精度に測定可能な分析装置を用いて、森林生態系におけるO3、NO、NO2フラックスの日変化と季節変化を同時にかつ定量的に明らかにする。森林生態系におけるオゾンと窒素酸化物の放出および吸収沈着量のデータを蓄積し、その変動要因を解明することで、それら発生源と吸収源を理解し、国内での大気環境・森林環境の保全に役立つ知見を得る。

方法

 NOとNO2のフラックス計測には、2018-2019年度植物研究助成にて開発したレーザー分光分析装置を用いる。O3フラックスの計測には2020年度植物研究助成にて開発した化学発光分析装置を用いる。申請者らは、独自に高速でNO、NO2、O3濃度を同時計測可能な装置を開発し、沿道での大気計測に成功した。開発した計測装置を改良し、富士吉田アカマツ林微気象観測タワー(森林総合研究所)にて渦相関法によるフラックス計測を実施する。

期待される成果

 いままで難しかった渦相関法によるオゾンと窒素酸化物のフラックス計測手法を確立することで、今後様々な森林におけるオゾンと窒素酸化物の放出・吸収沈着量のデータを蓄積することが出来る。森林におけるオゾンと窒素酸化物の放出・吸収沈着量の日変化と季節変化を定量的に明らかにし、変動要因と変動メカニズムの解明することで、オゾンと窒素酸化物の発生源と吸収源の理解、および国内での大気環境・森林環境の保全に役立つことが期待できる。