植物研究助成

植物研究助成 30-13

長深度OCTによる透明化した植物サンプルの組織構造の可視化

代表研究者 千葉大学 大学院工学研究院先進理化学専攻
准教授 椎名 達雄

背景

 植物の葉や茎は構造が厚く、かつ内部ほど植物生態に直結する組織が構成されている。透明化することによって生態機能と同時に構造が可視化されることが理想であり、そのための技術開発が望まれている。植物の細胞壁は組織による吸収と散乱が課題であるだけでなく、計測深度が浅いことは微視的な(microscopic)な視点ではカバーしきれない巨視的な(macroscopic)なアプローチが必要である。

目的

 本研究では長深度計測の対応が可能なOCTを開発し、透明化した植物サンプルを対象にすることで、内部機能と組織の可視化を目的とする。本研究では高感度で長深度な計測が可能な植物計測に特化したOCTを開発し、透明化した茎や葉を対象に全体を透過させて計測できる長深度計測法を実現する。計測範囲で10mm以上、分解能<10μmを実現し、蛍光観察の生態機能と同時に可視化することを目指す。

方法

 本申請では、植物の内部全体を可視化させることに特化して、計測範囲と分解能、感度を最適化させた専用OCTを開発する。計測範囲10mm(光路長15mm)を実現し、計測は、透明化した葉や茎等を計測サンプルとして、そのままサンプル全体のOCT計測を試みる。蛍光計測を同じサンプルで行い、内部組織と生態機能との可視化を実現する。
 具体的な研究開発事項として、専用の長深度プローブを設計し、空間分解能を維持してOCT断層像を取得する。細胞壁等の微視的な構造と器官組織等の巨視的な構造を識別するための画像処理を具現化する。
 植物サンプルの透明化には薬剤による方法を採用する。OCT計測に反映される細胞壁等の微視的な構造と器官組織等の巨視的な構造のバランスを見ながら、本計測にふさわしい透明化の技術を検討する。

期待される成果

 巨視的な観点に立った植物組織構造の把握に透明化の技術は大きく貢献しており、その3次元的な情報の抽出に本申請の長深度OCTの計測手法が適用できる。本申請はその研究の萌芽に位置付けられる。