植物研究助成

植物研究助成 30-14

AIによる画像認識を用いた街路樹の外観診断アプリの開発

代表研究者 長崎大学 ICT基盤センター
准教授 古賀 掲維

背景

 都市部において街路樹は、単に「緑」としてあるのではなく、二酸化炭素削減や生物種の保全による生物的機能、日陰や防塵などの物理的機能、そして快適性の向上による生理・心理的機能という、都市における多くの重要な役割を担っている。この役割のために、昭和60年以降には地方における都市でも街路樹が多く植えられたが、不適切な街路樹の管理により病気のままに放置されている街路樹が多い。街路樹の病気を適切に診断し管理すれば、街路樹の寿命を延ばして植え替えのコストを減らすことができ、かつ、景観を維持することができる。しかしながら、地方自治体には専門知識を持つ人材が不足しており、街路樹の適切な診断ができないのが大きな課題となっている。
 一方、最先端の医療技術に目を向けてみると、診断にAIによる画像認識を用いる研究が数多く行われている。AIを用いた画像認識技術は、利用される手法や計算機の性能向上によって目覚ましい発展を遂げており、既に人間の識別率を超え、実用域に入っている。このような背景の中、AIによる画像認識を街路樹の病気診断に活用できれば、街路樹の維持管理に貢献できるのではないかと考えた。

目的

 本研究では、街路樹の病気に関する専門的な知識のない地方自治体職員でも、撮影した街路樹の写真から街路樹の病気の部位および種類を検出できるツールを開発することを目的としている。具体的には、専門家の知見を学習させたAIをスマートフォンアプリに組み込むことにより、誰でも現場ですぐに街路樹の病気診断が行えるような手法を提供する。

方法

本研究では以下のような方法で研究を進める計画としている。
(1) 街路樹の病気データベースの構築
(2) 街路樹の病気診断AIの構築
(3) 街路樹の病気診断スマートフォンアプリの開発

期待される成果

 街路樹の問題は、長崎市に限ったことではなく、全国的な問題である。今回は、長崎県の街路樹を対象にAIを構築するが、データベースの範囲を全国の街路樹に広げることで、様々な地域で効率的な街路樹の維持管理が行えるようになるものと考えられる。