植物研究助成

植物研究助成 30-15

ハイパースペクトルカメラを用いた菌核菌病感染植物の早期検出

代表研究者 東北大学 大学院生命科学研究科
助教 上妻 馨梨

背景

 菌核病は糸状菌(カビ)の一種である菌核菌(Sclerotinia sclerotiorum)による植物への伝染性の病害であり、樹木、作物など100種類以上の植物に感染し、林業や農業での生産低下の原因になっている。感染後菌糸が形成されてからの薬剤散布では手遅れであり、治療効果のある薬剤がないことから感染部位を早期に特定し除去することが、感染拡大の抑制に有効な対策と考えられている。しかし、広大な森林や農場において感染を早期に特定することは容易ではない。そのため、広域における植物の病害感染を即座に選別するリモートセンシング技術の開発が求められる。菌核菌が植物へ感染すると光合成色素であるキサントフィル類の構成が変化することが報告されている。申請者のグループは531nm付近の反射光を用いた指標である光化学反射指数PRI (Photochemical Reflectance Index)が同色素の構成変化を検出することを生理学的検証から明らかにしている。本研究ではPRIによる植物の病害センシング法を提案し検証する。

目的

 植物への菌核菌の感染を早期発見し拡散を防ぐためには、広範囲における植物の病害応答変化をリモートセンシングし、可視情報として得ることが有効である。本研究では、ハイパースペクトルカメラ(分光波長組成を2次元で取得できるカメラ)を用いてPRIの変化を検出することで、植物の菌核病被害を可視化する技術を構築する。

方法

 本研究では、植物への菌核菌の感染をPRIシグナルから検出する。これまでの研究において、モデル植物であるシロイヌナズナやタバコの葉に菌核菌を感染させると、その感染の様子がPRIイメージングで可視化できることが確認された。これらの結果を踏まえて、菌核菌の被害による生産性低下が懸念されるトマトをターゲットにPRIイメージングによる病害検出を試みる。具体的には、閉鎖型の人工気象器内でトマトを栽培し、葉の生育ステージと菌核菌感染速度との関係性をPRIイメージングで可視化する。将来的には菌核病の被害が出ている農業現場での実証実験に繋げる。

期待される効果

 PRIイメージングを用いた病害検出は農業での労働コストの低減を可能にする。また、早期検出は感染拡大を最小限に抑えることから、収量増加に大きく寄与する。この手法をドローンスケールで行えば大規模農場や林業などでも活用できることから、本研究の成功は多大なインパクトを与えると期待される。