植物研究助成

植物研究助成 30-16

除草ロボットによる雑草生育型のセンシングと面的分布の把握

代表研究者 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
上級研究員 金井 源太

背景

 市販の自動除草(芝刈)ロボットは、電線で区切られたエリアを自動充電しながら継続して作業を行う。安全のため多くの機種で刈刃は機体下部の人や動物が誤って触れない位置にある。雑草や芝は機体に押し倒された後、刈刃で切断される仕組みであるため、除草可能かは植物体を押し倒すことができるかどうかによる。一方で、雑草植生は地力や日当たりなど圃場の面的条件を反映しており、その分布状況の把握は圃場の精密管理につながる。

目的

 雑草の生育型(growth form)ごとに各生育段階での押し倒しに「反発・抵抗する力」のパターンを明らかにし、除草ロボットの設計・導入の際に必要な基本情報として提示し、押し倒しに「反発・抵抗する力」から逆に雑草の生育型や生育段階などの生育状況を推定する新たな雑草植生の測定手法の確立を目的とする。さらに、自動作業中と同時に「反発・抵抗する力」を測定し、GPSデータと組合わせ、雑草分布の面的把握を目指す。

方法

 雑草の生育型を@メマツヨイグサ型(直立し、成長とともに木質化し、茎1本でも反発力が大きい。)、Aススキ型(叢生型、株になる。少数の茎葉は弱いが、大きくなると反発力が大きい)、Bメヒシバ型(個体や株は細く、弱いが、高密度化すると反発力が大きい。)の3つに類型化し、押し倒しに「反発・抵抗する力」を葉や茎の水分や生育状況との関係で整理する。
 物理的特性による雑草種同定手法の確立のため、「押し倒し」に「反発・抵抗する力」、変位に対するその反発力パターンから生育型、繁茂状況の推定手法を開発する。各生育型雑草にロボットを衝突させ、走行負荷と回転刃の負荷を経時的に測定し、推定用データとする。さらにGPS情報と除草負荷を組合わせ、各生育型の雑草の面的分布把握に取組む。

期待される成果

 今後の除草ロボット開発においても、安全を考慮すると機体で「押し倒し」た後に機体下で切断する機構となると予想され、「反発・抵抗する力」の体系的整理は必要である。また、「押し倒し」に対する「反発・抵抗する力」をGPS情報と併せて収集することで、雑草生育マップの自動生成と生成した雑草マップのAIによる圃場精密管理への展開が見通せる。