植物研究助成

植物研究助成 30-17

氷点下で咲く花の耐寒性機構の謎に挑む

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科
特任研究員 石川 雅也

背景

 地球規模の温暖化が進み、冬季の温度上昇により越年生植物の芽の展開が早まり、その後の降霜で多大な凍霜害を受けるなど、冷温帯での果樹や作物の凍霜害の増加が予想される。越年生植物器官の中で花芽や花は次代を担う重要な器官であるが、耐寒性が最も低く凍結感受性が高いことが知られる。しかし、大型扇風機の利用や散水などによる微気象制御法以外に、凍霜害の植物側からの根本的解決法は皆無なのが現状だ。一方、ウメやロウバイなど冬季氷点下でも開花する植物も多い。これらの植物はどのようにして凍結傷害を回避するのか、研究も少なく、詳細や多様性は不明だ。高山植物は、生育期間中に氷点下温度を何度も経験するが、生存可能だ。これらの氷点下で咲く花等の耐寒性機構解明は、果樹や作物などの凍霜害防除に関する重要な指針を提供すると思われる。

目的

 氷点下で咲く花等の凍結様式を非破壊的に可視化できる温度制御可能な専用MRI装置、及び赤外線サーモビュアを利用した非破壊凍結過程観察装置を開発する。これにより氷点下で咲く花の内部の凍結状態や凍結様式など、肉眼では不明な事象を可視化し、凍結傷害回避機構を解明する。

方法

 筑波大・寺田研究室と共同で、超電導MRI装置に装着できる正確な温度可変装置と大型試料用のコイルを作成し、氷点下温度での植物の凍結様式を可視化できる専用装置を開発し、マシンタイムも確保する。赤外線サーモビュアを利用した凍結過程解析のため、試料サイズや形状に適した冷却装置の設計を行う。器官内部や複雑な凍結過程を解析可能にするため、試料の調整法(半分に切開しオイルをかける等)や画像解析法を開発する。これらの手法を用いて氷点下で咲く各種植物の凍結様式・凍結過程解析を行い、氷点下生存戦略を解明する。

期待される成果

1) 植物試料の凍結様式、凍霜害の可視化専用MRIが開発され、マシンタイムが増加し、氷点下で咲く花の耐寒性機構の解析研究や本器を利用した共同研究が進む。
2) これまで不明だった氷点下で咲く花や高山植物などの凍結制御戦略の動的実態とその多様性およびその生態的意義やそのメカニズムが解明される。
3) 温暖化に伴う果樹や作物等の凍霜害回避法開発へ資することができる。