植物研究助成 30-18
外来タンポポが在来タンポポを駆逐する機構の解明
代表研究者 | 兵庫県立人と自然の博物館 研究員 京極 大助 |
【 背景 】 |
外来植物は在来生態系への脅威である。日本では欧州産の外来タンポポが、在来タンポポを駆逐しながら増えている。有効な保全策の立案には、駆逐の機構を解明する必要がある。在来種カンサイタンポポ(以下カンサイ)は有性生殖種である。日本に定着している外来タンポポは単為生殖系統だが花粉を生産する。カンサイは、同種花粉が受粉すると急速に花を閉じる。これまでの実験から、外来タンポポ(外来種と在来種の雑種を含む)花粉の受粉によっても、カンサイの花が閉じることが明らかとなった。外来花粉が同種花粉に先行して受粉した場合、早々に花が閉じることで、カンサイが花粉制限を受ける可能性がある。また外来花粉への反応は個体間で大きくばらつく。外来花粉によってすぐに花を閉じる個体は、めしべの花粉識別が不正確であるかもしれない。 |
【 目的 】 |
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本研究では、次の2つの仮説を検証する。
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【 方法 】 |
≪種子生産の低下≫外来タンポポとカンサイの鉢植えを交互に並べ、野生の送粉者のもとでの種子生産を定量する。外来花粉への感受性が高いカンサイ個体でのみ、外来タンポポ存在下で種子生産が低下すると期待される。 ≪外来花粉への感受性≫カンサイと外来タンポポの花粉管を識別する観察技法を確立する。確立された技法を2020年度の受粉実験に用いたカンサイに適用し、外来花粉をどれだけ受容するか(外来花粉がどれだけ柱頭上で発芽するか)を定量し、外来花粉に応じて花を閉じる速度との関係を明らかにする。 |
【 期待される成果 】 |
外来タンポポが在来タンポポの種子生産を低下させる機構が明らかとなり、外来タンポポの侵入に対して特に脆弱なカンサイ個体群を特定することなどが可能になる。積極的なカンサイ再導入を行う場合に、どのような個体を用いれば外来タンポポの影響を受けにくいかも明らかにできる。また外来種のみならず、在来植物群集の成立機構の理解へもつながると期待される。 |