植物研究助成

植物研究助成 30-21

カリウム肥料資源の節約が可能なイネ新品種の創出に関する研究

代表研究者 広島大学 大学院統合生命科学研究科
准教授 上田 晃弘

背景

 肥料の三要素のうち、カリウム肥料は鉱石から製造されるが、その原料となるカリ鉱石は日本国内ではほとんど産出されない。ゆえに農業利用される肥料の元になる鉱石資源は全量、海外からの輸入に依存している。また、カリ鉱石は有限資源であるため、その有効利活用技術の開発が求められている。

目的

 本研究ではカリウム肥料資源の節約に向いたイネ品種の開発を行う。遺伝的背景が異なる多様な在来イネ品種群から低カリウム施肥条件下でも生育が抑制されにくい品種を同定する。次いで、低カリウム耐性を制御する遺伝子座を同定することで、将来、栽培品種のカリウム要求性を減じさせるための育種母本を提供する素地を構築する。

方法

 在来イネ約150品種からすでに一次選抜により同定した低カリウム耐性を有する候補7品種を使用する。これら耐性7品種と非耐性品種を用い、K肥料添加区と無添加区を設けて水耕栽培を行い、交雑育種に用いるための耐性品種の絞り込みを行う。イネ実生3〜4葉期におけるシュート長や根長、重量や葉身部のK濃度(炎光光度計による測定)、クロロフィル濃度(SPAD計による測定)を測定し、耐性品種が持つ耐性機構について生理学的に明らかにする。耐性品種と感受性品種との交配と自殖によりF2個体を育成し、QTL-seqにより低カリウム耐性に関わる遺伝子座の同定を行う。

期待される成果

 本研究ではイネの低カリウム耐性品種を選抜し、その耐性機構や耐性を制御する遺伝子座の同定を行うことで、イネ栽培時のカリウムのぜいたく吸収を抑制するとともに、栽培時のカリウム施肥量を減じても収量低下を引き起こさない品種開発のための素地を築く。カリウム減肥栽培に効果的な遺伝子マーカーの開発を行うことで、肥料資源の節約の観点から持続的農業生産への貢献を果たす。