植物研究助成 30-22
サンゴ共生藻の増殖を促進する転写因子に着目した遺伝子発現系の解析
代表研究者 | 大阪府立大学 大学院理学系研究科 助教 吉原 静恵 |
【 背景 】 |
サンゴ礁は、浅海域に生育する3分の1以上の生物種に棲み家を与え、その成長は共生する褐虫藻の光合成産物に依存している。近年、海水温の上昇によって褐虫藻を失い死滅する“サンゴの白化現象”が懸念されている。サンゴと褐虫藻の共生を理解するために、褐虫藻の生育制御に関わる分子機構の理解が欠かせない。 化粧品などに利用される酸化亜鉛ナノ粒子(ZnO NP)を低濃度で褐虫藻に暴露すると、細胞増殖を大幅に促進することを見出し、ZnO NP暴露直後の遺伝子発現制御が増殖促進に関わることが示唆された。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は、褐虫藻の生育促進に関わる分子機構の解明である。まずmRNA-seq解析によってZnO NP暴露に伴い発現が変動する転写因子を同定する(令和2年度実施)。本研究では、これら転写因子の標的遺伝子を同定するためにChIP-seq(クロマチン免疫沈降シーケンス)解析を行い、褐虫藻の生育促進分子機構を考察する。 |
【 方法 】 |
R2年度に実施しているZnO NPを暴露した褐虫藻のmRNA-seq解析結果から、ZnO NPによって発現が変動した転写因子に着目し、以下、3つの計画を実施する。① 転写因子の抗体作成、② ChIP-seq解析、③ 褐虫藻の生育促進分子機構の考察 |
【 期待される成果 】 |
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褐虫藻の生育制御に関わる研究は少ないため、特に正の生育制御に関わる貴重な知見が得られると考えられる。また、同定した転写因子が藻類で保存されている場合は、恒常的発現による藻類の生育促進技術の開発を計画している。その結果、以下2点の効果が期待される。
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