植物研究助成 31-05
クローナル植物の巨大ジェネットのジェネティクスとエピジェネティクス
代表研究者 | 鶴岡工業高等専門学校 准教授 南 淳 |
【 背景 】 |
クローナル植物種は地球上の多様な生態系において優勢である。クローナル成長には有性生殖のコストやリスクを回避することができること、個体間で資源分配を行うことができるなどメリットがある一方、適応的進化の機会の欠如のデメリットも指摘される。クローナル植物の生態学研究は個体識別の段階から分子生物学実験を必要とし、非クローナル植物のそれに比べて遅れている。 |
【 目的 】 |
クローナル植物の機能的な個体(ラメット)から成る遺伝的な個体(ジェネット)は広範囲に及び、高寿命であり、空間的な環境の変異と時間的な環境の変化を生き抜いてきたと考えられる。これはどのような仕組みによるものか、ジェネティクス、エピジェネティクスの両面から明らかにする。 |
【 方法 】 |
様々な森林の林床に優勢な矮性低木であり、巨大なジェネットを形成するヤブコウジ(Ardisia japonica)の野外集団を研究対象とする。落葉広葉樹林を含む山形県鶴岡市、および常緑広葉樹林を含む静岡県伊豆半島を調査地とする。 (1)ジェネティクス変異の解析 ヤブコウジの集団内に体細胞突然変異による多型がどれくらい生じ、それが選抜されているのかを知るため、ジェネット内のラメット間の塩基配列の多型を解析する。マイクロサテライトマーカーによる解析後、次世代シーケンサーを利用により大量の一塩基多型を解析するMIG-seq法による解析を行う。 (2)エピジェネティクス変異の解析 環境によって変化し、遺伝子発現に影響するとされる主要なエピジェネティクスの分子機構であるDNAメチル化を調べる。ヤブコウジ集団内にDNAメチル化の多型がどれくらい生じ、それらがどのように分布しているか、MSAP法を用いて明らかにする。また、DNAメチル化多型遺伝子座を同定する。 |
【 期待される成果 】 |
クローナル植物の生態、植物の群落形成過程についての知見を増し、森林の保全、管理方法について重要な情報を与える。 |