植物研究助成

植物研究助成 31-06

超暴風台風による樹木風倒メカニズムの分析と被害林再生戦略の検討

代表研究者 千葉大学 大学院園芸学研究院
教授 小林 達明

背景

 地球温暖化によって日本列島南岸の海水温が上昇傾向にあり、瞬間最大風速が50m/sを超える超暴風台風が本州に上陸するようになってきている。令和元年台風15 号は千葉県を中心に大量の倒木を引き起こし、広域長期の停電により社会生活に大きな影響があった。従来被害が少なかった常緑広葉樹でもたくさんの倒木が発生しており、常緑広葉樹の風倒機構研究は重要である。

目的

 複数の広葉樹樹種・複数の樹形の樹木で、抗力係数および幹の曲げ強度を比較測することによって、風速の変化に伴う樹冠への風荷重・樹幹の曲げ応力を予測できるようにし、暴風による常緑広葉樹の幹折れ予測をシミュレートできるようにする。

方法

 千葉県立大房岬自然公園の樹林地において、Koizumi et al.(2010)が新しく提案した方法で常緑広葉樹の抗力係数を現場計測する。マテバシイ疎林個体、マテバシイ密林個体、モチノキ、スダジイ、センダン生立木の樹幹変位を継続測定し、同時に樹冠部の風速を継続測定し、風速―樹幹変位関係を求める。また別途に、人為的に樹幹上部をウィンチで牽引し人為的に発生させた曲げ応力と樹幹曲げ変形の関係を求めることによって、樹幹変位から風荷重を求める関係式を作成する。それらにより、1式を用いて抗力係数CDを推定する。
図
 以上のパラメータから樹体の風荷重と幹の曲げ応力を計算する。一方、採取試料から樹種ごとに木部の曲げ強度や弾性を測定し、現場における応力波測定から実大樹木の樹幹の材質を評価する。以上によってシミュレーションを行い、樹種・樹形の違いによる幹折れリスクの違いを評価する

期待される成果

 この研究により、従来知見の少ない常緑広葉樹の抗力係数について一般的特性が明らかになれば、風速に伴う広葉樹の幹折れ風倒リスクが予測できるようになる。科研費で広域被害評価、詳細樹木調査等行っており、合わせて総合的な超暴風台風対策の検討が可能になると考えられ、気候変動下の里山や防風林の適応管理について貢献できる。