植物研究助成

植物研究助成 31-07

個体表現型スクリーニングに立脚した新規光合成促進剤の開発

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科
准教授 矢守 航

背景

 世界的な食糧需要の増加に伴って、2050年までに現在の作物生産量を50%以上引き上げる必要がある。植物の物質生産の基本である光合成を制御して、物質生産能力を向上させる基盤技術の研究が必須である。これまでに遺伝子組換え技術を駆使して光合成向上を目標とした研究例は多数あるが、国内外において遺伝子組換え植物を商業的に栽培することは様々な障壁があり容易ではないため、新たな技術革新が必要な状況である。

目的

 本申請課題では、ケミカルバイオロジーを援用して、光合成の可視化装置や植物成長解析によって、1万5千種以上の化合物評価を行う“個体表現型”を対象とした迅速スクリーニング評価系を確立し、その上で、光合成向上に寄与する化合物を同定することを目的とする。

方法

 3Dプリンターを用いて独自の栽培用96穴マイクロプレートを作製する。植物を栽培した後、化合物の自動分注機と光合成の可視化装置を援用して、「栽培・ケミカル処理・フェノタイピング・データ解析」の各プロセスを最大限自動化することで、迅速な化合物スクリーニング系を構築する。また、これらの解析系を用い、1万5千種以上の化合物スクリーニングを行い、光合成向上のための基本骨格となる化合物の選抜を行う。

期待される成果

 本研究課題では、遺伝子組換えを伴わずに、光合成や作物生産性の改善に取り組むものであり、国の科学技術行政施策に直接貢献する研究課題である。光合成はあらゆる植物の物質生産の基礎をなしているため、その波及効果は極めて大きく、光合成を鍵としたグローバルな作物生産の増大と安定化につながると期待される。