植物研究助成

植物研究助成 31-09

超小型分光センサを活用した植生の多点同時モニタリング技術の開発

代表研究者 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
准教授 宮本 浩一郎

背景

 温暖化の影響による極端な環境変化は植物にとって大きなストレスとなり、我々の生存を含めた生態系全体に大きな影響を与え得る。広域における植生の環境ストレス検出にはドローンや観測タワーを用いてリモートセンシングする技術が使われているが、表面的な情報しか得られないなどさまざまな課題がある。そこで、申請者は葉に直接取り付けて単体動作する超小型の分光観察ユニットと、測定結果を自動で収集し解析するシステムの開発に取り組んできた。

目的

 植物の健康状態をリアルタイムにモニタし、問題に対して直ちに対処することは、農業・林業における経済損失の抑制や、生態系保持の観点から非常に重要である。本研究では申請者が開発したセンサユニットを葉に取り付け、植物の生理挙動を測定する。さらにシステム開発を推進し、クラウド技術を用いてデータを取得することで、植物の環境応答モニタし、遠隔からリアルタイムに、且つ長期間観察する技術の構築を目指す。

方法

 本研究ではセンサユニットを植物に取り付け、春から秋にかけて屋外で多点同時測定を行うことで、植物の環境応答センシング技術の構築を行う。自作ユニットおよび測定システムの開発をさらに推進し、植生パラメータ測定の検証および植物研究園での実証実験に取り組む。植物研究園(静岡県熱海市)での測定を申請者の研究拠点である東北大学(宮城県仙台市)からリアルタイムに解析する。現地調査の際には、対象となる植物を従来法によって評価(例:クロロフィル蛍光解析、フルスペック分光測定、土中水分量測定、土中pH測定など)し、自作センサのストレス検出能力と比較検証する。

期待される成果

 超小型センサユニットおよび測定システムの開発推進により、植物の健康状態をダイレクトに検出、多点同時測定を可能にする。さらに従来の評価法やリモートセンシングと補完し合うことで、植物モニタリングを高精度で行うことができる。例えば大規模農業におけるフィールド管理に応用することで農業コストの削減が可能になる。また、森林に広く展開することで地球温暖化加速に起因した生態系保全活動や脱炭素化の取り組みに貢献できる技術になり得る。