植物研究助成 31-11
動的光散乱干渉画像法を用いたマイクロプラスティックの植物への毒性評価
代表研究者 | 埼玉大学 大学院理工学研究科 教授 門野 博史 |
【 背景 】 |
環境汚染物質として近年マイクロプラスティック(MPs)による海洋汚染が注目を集めている。しかし、MPsの問題は海洋だけではない。農業ではマルチングやビニールハウスに大量のプラスティックが使用されてきたが、近年では環境に配慮し生分解性プラスティックが用いられるようになった。生分解性プラスティックは、微生物の作用により時間を経て細片化・分解されるが、その過程では海洋のMPs同様の問題を呈することは想像に難くない。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は、高感度な光学干渉手法である動的光散乱干渉画像法(DLSII)を用いることにより、植物の発芽あるいは成長の極初期段階で非破壊・非接触且つリアルタイムで、土壌中のMPsおよび重金属などによる複合汚染が植物や農作物に与える毒性を評価する手法を開発することである。 |
【 方法 】 |
散乱性の強い物体にレーザー光のようなコヒーレントな光を照明すると、試料からの散乱光のランダムな干渉により、観察面にレーザースペックルパターンと呼ばれるランダムな斑点模様が生ずる。対象物が生物試料であると、生物としての活動、すなわち細胞内の微小器官の活動や散乱体の輸送により生じるスペックルパターンが動的に変動する。これはバイオスペックルと呼ばれる現象である。この変動は内部活性が高いほど大きくなる。本研究では新に、この信号に注目し、植物試料内の断層画像を得ることにより植物試料内の活性状態をモニタする。本手法によりMPsや重金属で汚染された土壌の植物に対する毒性の新たな評価法の創出を試みる。研究では具体的に種々あるMPs材料やサイズ依存の毒性を明らかにする。提案手法の独創的な点は、得られる試料の断層画像中に含まれる動的散乱信号に着目する点である。 |
【 期待される成果 】 |
土壌のMPsは現状としては大きな問題として認識されていないが、これは生物影響が顕在化していないと捉えるよりは、実環境での軽微な影響を評価する手法が開発・適用されてこなかったと捉えるべきである。本研究はこのような学術的あるいは社会的要求に応えるものである。本手法によりマイクロプラスティックや土壌の重金属による汚染対策に活用できる他、土壌汚染に耐性のある作物品種のスクリーニングにも応用可能である。 |