植物研究助成 31-22
伊豆半島・諸島を中心としたガクアジサイにおける耐塩性機構の解明
代表研究者 | 明治大学 研究・知財戦略機構 博士研究員 森本 隼人 |
【 背景 】 |
アジサイは、日本固有のガクアジサイ野生種を中心に育種された園芸種である。ガクアジサイは、房総半島、三浦半島、伊豆半島および諸島の限られた地域に分布し、強風、強光、塩害等を受ける沿岸部に自生している。伊豆大島や三宅島の個体のように火山噴火後の火砕流地における自生するものも確認されている。また伊豆大島や八丈島に自生するガクアジサイは、沿岸から離れた内陸部においても自生し、耐塩性に関して遺伝的な多様性(地域性)があると考えている。しかしながらアジサイ野生種における耐塩性機構は不明である。 |
【 目的 】 |
本研究では、伊豆半島・諸島を中心とするガクアジサイの耐塩性機構を明らかにする。またガクアジサイの地域性と耐塩性の関係性を明らかにし、より強い耐塩性系統の選抜時に利用可能な指標を探索する。 |
【 方法 】 |
ガクアジサイは、伊豆半島・諸島、北硫黄島、房総半島の自生地沿岸部から採取し育成している個体を使用する。耐塩性に関わる因子の特定のため、塩処理後に発生する活性酸素種量および抗酸化活性、耐塩性に重要な浸透調整を担う適合溶質を比色法やHPLCにより定量する。塩害要因のカチオンの植物体分布を評価するため、NaCl溶液を用いて人工気象室を用いた底面潅水試験を実施する。その後、上位葉、下位葉、茎、葉柄、根に蓄積したカチオン量比を測定し、植物体におけるカチオン、特に塩障害の主要因であるNaイオンの局在を調べる。またNaの排除機構を推定し、葉の表面に析出した塩を測定する。以上の結果を基に、根から光合成器官である葉へのNaの移動量と耐塩性との関係性を明らかにする。現地調査・地域性と耐塩性の関係性の評価では、伊豆大島・八丈島の沿岸部や内陸部に自生するガクアジサイの自生地環境(土壌の電気伝導度やイオン量)、周辺の植生、海との距離等について調査する。 |
【 期待される成果 】 |
ガクアジサイの耐塩性機構の解明および耐塩性と自生地場所との関係性の理解は、より強い耐塩性アジサイの育種素材選抜時における耐塩性に関わる指標を提供する。さらに耐塩性機構の解明を通して、ガクアジサイの除塩作用機構が明らかになれば、ファイトレメディエーターとして塩害地域における土壌改善への利用に期待できる。 |