植物研究助成

植物研究助成 31-23

伊豆地方におけるアジサイおよびツツジの遺伝的分化に関する研究

代表研究者 明治大学 研究知財戦略機構
特任講師 山本 将

背景

 伊豆地方(伊豆半島から伊豆諸島)は植物区系ではフォッサマグナ地域に属し、固有な植物が多い。伊豆半島の山間部は北方系の植物、低地や海岸部は温暖で南方系植物が自生する。伊豆諸島は火山島からなり、火山砕屑物の上でも遷移が進んでいる。伊豆地方は多様な環境条件を有し、そのことが独自の種分化に影響していると考えられ、また伊豆諸島で分化した種が本州に移入した仮説もあるが不明点が多い。アジサイ、ツツジは伊豆地方にも固有種が見られ、鑑賞価値が高く、園芸的にも重要である。伊豆地方でこれらの植物は、山間部の林内、 海岸沿い、噴火後の火山砕屑物の植生内など様々な場所に自生が見られ、環境への適応が考えられる。各種の集団がどのような環境へ適応して分化と分布拡大し、またそれらの園芸的にも重要な適応性の面からの評価はされていない。

目的

 伊豆地方にはガクアジサイ、オオシマツツジが固有種として自生し、また近縁種も周辺地域に自生が見られる。これらに対して、(1)野生集団が伊豆地方でどのように分布拡大したかの推定、(2)自生環境が異なる集団で形態的・遺伝的分化があるか、(3)園芸利用されるこれら 2 種の環境適応性の評価を行う。

方法

 ガクアジサイ、オオシマツツジおよびそれらの近縁種の調査対象地は、異なる環境下での分化を評価するために、伊豆地方を中心とした自生地で火山砕屑物上、海岸沿い、海岸から離れた山間部で行う。植物体の計測は葉の大きさや花色などの測定をする。得られた植物体の一部からDNA抽出し、PCR法で遺伝子型を決定後、遺伝的多様性や集団構造の評価、季候や環境条件と分布拡大の関係性の評価を行う。環境適応性の評価には、自生地から採取した枝を挿し木で増殖し、次年度以降にはさらに異なる土壌条件や日射条件で栽培し、成長率の比較を行うことを予定している。

期待される成果

 各野生集団の遺伝的多様性の評価と採取個体の栽培により、(1) 伊豆地方でどのルートで分布拡大したか、(2)野生集団の遺伝的多様性の解明、集団がどのような環境で適応し分化したか、(3)海岸沿い、溶岩上や砂漠など、環境ストレスが多い環境に適応した個体を評価し、園芸種に未利用な適応性のある個体の選抜が行えること期待される。